FXと為替離れ
バフェット氏のように中長期でドル安を見込んだ取引を展開してきた投資家の損切り、いわゆる「バフェットの損切り」は今春までにほぼ完了したようだ。そうであれば、今後は逆に、ふたたび中長期のドル売りに動く可能性も注目されるだろう。  ただその中で、バフェット氏自身がドル売り本格再開に動くかは微妙。4−6月期は、4月末G7(7カ国財務相会議)後に一時ドルが急落する場面があった。しかしその中でもバークシャー・ハザウェイによると、同社は40億ドル以上のドル買い・外貨売りに動いていたようだ。  この背景には、バフェット氏の「為替離れ」ということもありそうだ。バフェット氏は、昨年のドル高による為替損失で、為替取引の難しさを再認識したとされる。これを受けて、ドル建て資産の為替リスク回避としては、海外企業のM&A中心に方針を転換したとされる。FX取引、FX初心者、くりっく365、FX口座開設、FX資料請求  今年に入ってからふたたびドル安の芽が出てきたことで、バークシャー・ハザウェイの外為運用収益は6月までの半年間で2億円以上になったとされる。ドル売り取引を圧縮せずに維持しておけば、もちろん収益はもっと大きくなっていたわけだが、バフェット氏の「為替離れ」の意志は相応に強いようだ。FOMCが2004年5月以来の利上げ見送りを決定した。これに対してドルは反発となっている。これは前回のレポートで書いたように、基本的に私の予想通りだ。私はこの間「米利上げ見送り=ドル安」との見方に疑問を呈してきた。そもそも前回利上げ見送り局面(2000年6月末)ではドルはむしろ上昇へ向かっていた。こういったことなどから、利上げ見送りでもドル下落は限定的で、むしろ上がる可能性があるとの見方を示してきた。  しかも前回レポートで書いたように、今年に入ってからの雇用統計発表前後のパターン通りなら、むしろ117−119円へドル高に向かう流れになってもおかしくなかった。  一般的には、FOMC利上げ見送りは、あくまで一休みで、まだ打ち止めではなく再利上げの可能性が残っているからドルが上がっているとの説明が多いようだが、あくまで後講釈であり、上記のようにその後講釈がなくてもドル反発は予見可能だっただろう。FX  ところで、そのドル反発だが、本来なら対ユーロ、英ポンドでの可能性が大きいのではないか。  持ち高をみると、8月1日現在で円は4万枚超の売り持ちであるのに対し、ユーロ7万枚超、ポンドは4万枚超といった過去最大圏の買い持ちだ。つまり対円でドルは買い持ち、一方対ユーロ、ポンドではドル「売られ過ぎ」の可能性がある。  基本で考えたら、ドル売られ過ぎの対象通貨こそ下落リスクが大きいだろう。つまりドル高の裏返しでは、ユーロ、ポンドの下落リスクが大きく、円はそれほどでもないかもしれない。ところで、米利上げについても、今回はあくまで休止後で、今後についてはまだ見方が分かれているといった報道が多い。そうなのだろうか。金利市場の動きからすると、再利上げ観測は大幅に後退しているということになるのではないか。  市場の、政策金利変更についての織り込み具合は、金利先物相場の動向が目安とされる。それによると、先週末の段階で、0.25%の再利上げが9月におこなわれる、または年末までにおこなわれるとの織り込み度は、それぞれ70%超、90%超にも上っていた。ところが、8日FOMC後は、それぞれ20%台、50%台まで急低下した。  年内残り3回のFOMCで0.25%の再利上げがおこなわれるとの織り込み度が50%あるというのはまだ決して低いわけではないが、しかしFOMCを前後して90→50%といった数字の変化は、明らかに再利上げ観測の大幅低下といえるものだろう。  では再利上げ観測が低下する中で、なぜドルは反発したのだろうか。しかし、これまで私が指摘してきた通り、過去の実績を見る限り、利上げ終了でのドル高はむしろ当然のことだったのである。  以上からすると、FOMC後にドル反発となったから、再利上げ観測が過剰に注目されているきらいもあるのではないか。これは株価についても同様で、株安となったから、再利上げ懸念が指摘されている可能性がある。  大事なのは、再利上げ懸念=ドル高・株安ではないということ。だとすると、再利上げ懸念が後退してもドル高・株安が続く可能性があるだろう。注目された4日発表米7月雇用統計が予想を下回るものとなり、8日FOMCでついに2年間続いてきた米利上げが見送られるとの見方が強まってきた。ではドルは一段安へ向かうのかといえば、それは微妙だろう。一般通説をめぐる大いなる誤解の可能性について、とくに2点を再確認してみたい。 毎月初めに発表される米雇用統計は、金融市場でも最も注目を集める「花形統計」だ。このため、市場関係者のコメントでも、「当面の行方は米雇用統計の結果次第」というのが少なくない。FX  では、実際に為替が米雇用統計次第で決まってきたかといえば、決してそうではなく、むしろ米雇用統計を受けた相場の動きはすぐに煮詰まる、つまり米雇用統計相場は「短命」ということが多かった。  たとえば、今年に入ってから7月まで7回の米雇用統計相場を調べてみる、じつに6回が雇用統計から5営業日以内にその月の天井ないし底値をつけていた。このうち5回の天底は3営業日以内に決着していた。  米雇用統計は原則的に金曜日に発表される。つまり3営業日以内ということは、翌週の火曜日までに当面の天井ないし底値をつけていたということだ。  さすが「花形統計」だけに、米雇用統計前後の値動きは激しい。今年7月までの米雇用統計発表日のドル円値幅平均は1.43円で、普通の一日値幅1円を大きく上回った。また同じ発表日の寄り付きと引け値の差(日足実体部)は平均0.86円で、これも平均の0.5円を上回っていた。FX  つまりさすが「花形統計」だけに、発表前後で相場は大きく動く。しかしそれがドル急落でも、2−3日で底を打つし、逆にドル急騰でも2−3日で頭打ちになることが多かった。その意味では、雇用統計次第でトレンドが決まるというのは明らかな間違いで、雇用統計相場はむしろ「短命」というのが過去の実績の教えるところだ。 もう一つ一般通説に「誤解」の疑いのあるのは、「米利上げ見送り=ドル安」ということ。少なくとも前回の米利上げ終了局面はその逆だった。  前回米利上げ局面は1999年6月−2000年5月だった。ところで、この2000年5月が「最後の利上げ」だったのは、6月以降のFOMCで利上げがおこなわれなかったことにより事後的に確認されたものだった。  ではそういった中で為替はどう動いていたのか。ドルは「最後の利上げ」5月FOMCの後から、「最初の利上げ見送り」6月FOMCにかけて対円で下落した。しかし6月FOMCでの利上げ見送り後は約一ヶ月上昇トレンドとなった。  さて8月8日のFOMCは、「最初の利上げ見送り」があるかが注目されている。かりに見送りとなっても、過去の実績を見る限り本来はドル一段安になるか懐疑的だろう。金相場とドルの相関性が一部で密かに注目されてきた。金相場を約5年先行させると、ここ数年のドル実効相場とほぼ重なり合う状況が続いているのである。両者が似ているのは、ともに外貨準備の使命見直し論が展開したといった共通の環境にあったためと考えることもできる。ところで、この相関性がさらに続くようなら、じつは現在のドルは下落最終局面、つまりドルは大底を打つ寸前にあるといった結論になる。 ドルは、総合力を示す実効相場で見ると、2002年をピークに下落トレンドが展開してきた。このような長期ドル下落をもたらしている一因として、「外貨準備のドル離れ」議論があった。  1999年に欧州統一通貨ユーロが誕生したことをきっかけに、それまでの唯一の基軸通貨米ドルといった体制から、「第2の基軸通貨」ユーロとのバードンシェアリング(負担の分担)が進み始めた。具体的には、外貨準備に占める米ドルの割合を引き下げ、ユーロにシフトするといったこと。  そういった中で、いわゆるBRICsなど新興市場国がドル売り・ユーロ買いを進め、またここ数年の歴史的原油高騰相場で潤った中東産油国もドル売り・ユーロ買いを積極化しているとの観測が流れ、それらが中長期的にもドルを押し下げる要因になっているといった解説は多かった。  ところで、このような外貨準備に占める使命の見直しといった議論が、かつて金についても展開したことがあった。1990年代後半に、各国政府が外貨準備で保有してきた金の売却を積極化しており、それが金相場の中長期的な押し下げ要因になっているといった話題が盛り上がった。  かたや外貨準備のドル離れ、かたや外貨準備の金離れ。取り巻く構図が似ていることから値動きの相関性はどうかとして重ねてみたところ、値動きにもかなりの相関性が確認された。別グラフは、1995年からの金相場と、2000年7月からのドル実効相場(BOE算出)を重ねたものだが、両者の値動きはとてもよく似た状況が続いてきたことがわかる。 ところで、さらに重要なのは、そんなアナロジー(類似性)が示すドルの未来についてである。ここまで値動きが似てきたから、似た状況、つまりアナロジーがさらに続くということなら、ドルは今や下落の最終局面にあり、中長期的に急上昇に向かう寸前にあるといった結論になるのである。  金相場は、「外貨準備の使命終了」論が展開する中でいつまでも下がり続けたわけではなかった。1995年から数えると、1150営業日前後でいわゆる「一番底」をつけ、さらに1530営業日前後で「二番底」を付けると、その後は急上昇に転じた。  さて、今回2000年7月から数えたドル実効相場も、FXやはり1120営業日前後でこれまでのところの「一番底」を付けたようになっている。そして現在は1520営業日以上経過しつつある。金相場とのアナロジーからすると、「二番底」の目前にあるということになるわけだ。  ドルについては、いわゆる米国の双子赤字など構造論から見て、近い将来長期的なドル安大相場が始まるといった「ドル高最終局面」といった見方もある。しかしこの金とのアナロジーからすると、正反対の「ドル安最終局面」といった可能性が出てくる。いずれにしても長期トレンドの大きな岐路にあることは間違いなさそうだ。